強迫症(Obsessive-Compulsive Disorder/旧称:強迫性障害)は、自分でも「ばかげている」「やりすぎだ」と分かっていても、止められない考えや行動に苦しめられる症状です。意思の弱さや性格の問題ではなく、適切な治療で改善が期待できる、れっきとした精神疾患のひとつです。このページでは、強迫症の主な症状タイプと、エビデンスに基づく治療法について、公認心理師の視点からご説明します。
強迫症は、強迫観念(不安を引き起こす考え・イメージ・衝動)と、強迫行為(その不安を打ち消そうとする行動や心の中の儀式)を中核症状とする精神疾患です。
たとえば「手にばい菌がついたかもしれない」という考え(強迫観念)が頭から離れず、何度も執拗に手を洗う(強迫行為)。「鍵をかけ忘れたかも」と思うと不安に耐えられず、何度も確認に戻る。本人もそれが過剰であると分かっているのに、止めようとすると強い不安や違和感に襲われるため、行為をやめることができません。
多くの場合、症状は本人を強く消耗させ、生活時間の大半を奪い、人間関係や仕事・学業に支障をきたします。「自分は気にしすぎなだけ」「もう少し頑張れば」と長年ひとりで抱え込んできた方も少なくありません。
強迫症は、4つのステップが繰り返される悪循環として理解できます。この循環を断ち切ることが治療の鍵になります。
頭から離れない不快な考え・イメージ・衝動が浮かびます。
その考えに対して、強い不安や嫌悪感、「不完全な感じ」が生じます。
不安を下げるために、洗浄・確認・繰り返しなどの行為を行います。
不安は一時的に下がりますが、「行為をしないと不安になる」という学習が強まり、次の強迫観念がより起こりやすくなります。
強迫症の症状は人によって表れ方が大きく異なります。複数のタイプを併せ持つ方も少なくありません。以下は代表的なタイプですが、ここに当てはまらない症状でも、強迫症の可能性があります。
「ばい菌・汚れ・ウイルス・化学物質などに汚染されたのではないか」という強迫観念から、過剰な手洗い・入浴・洗濯・消毒を繰り返してしまうタイプです。
「鍵をかけ忘れた」「火を消し忘れた」「書類を間違えた」など、確認しても確認しても不安が消えず、繰り返し確かめてしまうタイプです。
「自分が誰かを傷つけてしまうのではないか」「気づかぬうちに犯罪を犯したのでは」という考えに苦しめられるタイプ。実際の加害衝動ではなく、その考えが浮かぶこと自体を強く恐れます。
「物の配置が左右対称でないと落ち着かない」「ちょうど良い感じになるまで繰り返さないと気が済まない」という、感覚的な違和感が中心となるタイプです。
「ある数字を見たら不幸が起きる」「特定の言葉を言うと家族に悪いことが起こる」など、根拠のない結びつきで不幸を予感し、それを打ち消す行為を繰り返すタイプです。
自分の価値観や信仰に反する考え・性的なイメージが繰り返し浮かび、強い罪悪感に苦しめられるタイプ。「こんなことを考える自分はおかしいのでは」と打ち明けづらく、ひとりで抱え込みがちです。
上記のような考えが浮かぶことは、あなたが「危険な人」であることを意味しません。むしろ強迫症の特徴のひとつは「本当はそうしたくない、そう考えたくないのに浮かんでしまう」ことです。打ち明けにくいテーマこそ、専門家との対話のなかで丁寧に整理していくことができます。
強迫症に対しては、認知行動療法(CBT)と薬物療法が、効果が実証されている主要な治療法です。重症度や生活状況に応じて、両方を組み合わせることもあります。当相談室では、心理療法のなかでも特にエビデンスが豊富な「曝露反応妨害法(ERP)」を中心にお手伝いしています。
強迫症に対して、世界的に第一選択とされる心理療法です。「不安を感じる場面にあえて触れ(曝露)、その後に強迫行為を行わずに過ごす(反応妨害)」という練習を、段階的に重ねていきます。
はじめは小さな不安からスタートし、「不安は何もしなくても時間とともに下がる」「強迫行為をしなくても恐れていた結果は起きない」という体験を積み重ねます。これにより、強迫症の悪循環が少しずつほどけていきます。
SSRIをはじめとする抗うつ薬が強迫症に対して有効性が確認されています。処方は精神科・心療内科の医師が行います。CBTとの併用で、より効果が高まる場合があります。
症状が重く日常生活への影響が大きい場合は、薬物療法で症状を和らげながらCBTに取り組むことで、より無理なく治療を進められることがあります。
ご家族が「巻き込まれ(確認に答える・代わりに洗うなど)」を続けると、症状が維持されてしまうことがあります。ご家族向けの心理教育も重要な治療の一部です。
確認・洗浄・繰り返しなどに使う時間が、生活の中で無視できないほど大きくなっている場合。
遅刻が増えた、外出が億劫になった、家事や勉強に集中できないなど、生活の質に明らかな影響が出ている場合。
「ばかげている」と頭で分かっていても、自分の意思では止められない状態が続いている場合。
家族に確認を求める、代わりに洗ってもらう、外出を制限するなど、ご家族の生活にも影響が及んでいる場合。
強迫症は、うつや不安症を伴うことが多くあります。気分の落ち込みが続いている場合は併せてご相談ください。
通院・服薬中だが心理療法も組み合わせたい、というご相談も歓迎します。主治医の先生と連携しながら進めます。
「これって強迫症かもしれない」「もう少し詳しく相談してみたい」というお気持ちがあれば、初回相談(30分/1,500円)からお気軽にどうぞ。ニックネームでのお申し込みもできます。